第5章 紫な五男の場合 「知らないこと」
「…電話、あったよ知らない人から」
後ろを振り向くと寂しそうな顔をした彼が
固定電話の方をチラッと見た。
私もつられて視線を移すと、
留守電のボタンが赤く点滅している。
もう一度彼を見ると、
ん、と顎で私に指示を出した。
ああ、はい、 留守電を聞けと。
私は言われるがまま
留守電の再生ボタンを押す。
《ゴゴ19ジ18フン、1ケンデス
ピーッ…
あーさん?白川です。
携帯、会社に忘れてますよ?
…っとに、ドジですよね。
俺が預かってるんで、感謝してくださいよ?
じゃ、お礼、楽しみにしてまーす。
プー…プー…プー…
…サイセイガオワリマシタ》