第5章 紫な五男の場合 「知らないこと」
もういい、知らないよ、
知らないんだからね。
何よ、久しぶりに会えたのにさ、
また一段と格好よくなっちゃってさ、
こっちだけテンション上がってさ
…ばかみたい。
私が何も言わずにそっぽ向くと
と、久しぶりに呼ばれた名前に
ドキッとした。
「…はい」
「俺怒ってるの、わかってる?」
「…は、あ」
「怒られてんの、わかってる?」
「…何となく…」
「何で怒ってるか、わかってる?」
「…わ、わかりません」
背後で聞こえる潤くんの声が
段々と近付いてくる。
訊問のような詰め寄り方に、
脂汗やら冷や汗やら
汗という汗が全て出てくる状態の私。