第5章 紫な五男の場合 「知らないこと」
ご機嫌ななめの理由がわからない。
もしかして…連絡無視した、とか。
確認のために、慌てて携帯を探し出すが。
「携帯が…ない!」
鞄の中身を全部その場に散りばめ
スーツのポケットも確認し
もう他に携帯を収納するスペースなんて
「知ってる」
私のその状況をシッカリ見ていた彼が
やっとお口を開いてくれた。
「…もしかして…連絡、してくれた?」
彼の視線が私から動かないせいで
綺麗な顔からの物凄い圧を感じる。
「いや、してない」
なんだそれ!
じゃあ何?わっかんないよ!
何でそんなにご機嫌斜めなの。
教えろ教えろ教えろ教えろ
心の中の言葉をオブラートに包んで
口から出る言葉。
「…私、何かした?」
「………」
おーっつ、このタイミングでまた無視かい!