第5章 紫な五男の場合 「知らないこと」
「…じゅ、潤くーん」
あ、無視ですか、無視ですね?
あ~無視だなんて。
これで3回目の無視。
仕事から帰ってみると、
彼がソファーで本を読んでいたから驚いた。
私が帰ってきたのに視線もくれず
本を読み続ける彼。
ソファーにもたれ、足を組む姿は
もはや何処かの国の王子さ…
いやその素振りは王様だ。
その最近買った真っ赤なお洒落なソファーも
なんならあなたの方がお似合いなので
貰ってください、とでも言いたくなる。
「な、なんでいるの潤くん!」
約束なんてしてないし、
携帯に連絡なんてなかったし、
嬉しいけど嬉しいけど嬉しいけど
と溢れる思いが止まらなくて興奮する私に
「………」
何もなかったような、
何も聞こえなかったような
そんな態度で本を読む彼。
…あれ?聞こえてない?…んな訳あるか!
と思ったけれど、
もしかしたらもしかするので、
もう一度だけ呼んでみよう!
「…おーい、潤くーん」
「………」
…まじでシカトですか、
を続けてかれこれ1時間。