第3章 緑な三男の場合 「花火」
玄関を出るとすでに外はお祭りムードで
屋台が沢山並んでる。
浴衣を着たカップルが
わたあめやたこ焼きを分け合う姿に
何度も自分達を重ねてしまう。
雅紀くん、浴衣似合うだろうなあ…、
そう思った時にはもう
空想の世界に浸っていた私。
「ちゃんっ!射的しよ!」
「私出来るかな」
「大丈夫だって!俺見てて!
手本見せてあげるから!」
浴衣の袖を捲る彼の、
細いけれど筋肉質で男性らしい長い腕が
露になって、またキュンとトキメイて。
ね!うまいっしょ!?
と的に当て、振り向き様に
ニカッと白い歯を見せる彼を見て
やっぱり雅紀くんが一番かっこい…
って、危ない危ない、
空想の世界から抜け出せなくなる所だった。
現実に戻ると、はぐれないようにと
手を繋ぐ男女が周りに溢れて、
私はそれに埋もれてしまいそうになる。
息苦しくなりながらも、
それでもやっぱり
一緒に花火見たかったなあ、
と思わずにはいられない。
隣を見ても彼の姿はなくて
なんだか少し寂しくなる。
花火なんて
早く終わってしまえ、
そう思った。