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第一話 シェアハウスの恋人

第6章 バイト


他テーブルの来客も集まり始め、店内が賑やかになる。
マイコと健永で慌ただしく店内を駆け回る。
「健永ー、個室次の料理もってってー」
「ゴメン!3番に松井さんと徳光さん来てるから俺そっち!」
「あ、じゃあ私個室行きまーす!」
常連さんが来ると、自然と店員のなかで薄ら担当制が敷かれる。
3番さんは健永くんを気に入っていて、どうやら自分たちのお店にスカウトまでしているようだ。

コンコンッ、失礼しまーす。
個室のドアをスライドさせると数枚の写真をテーブル上に置きながら談笑していた。
「こちら甘栗と天使海老の唐辛子炒めです。お取り分けします。」

「あぁ、お願い。」
一瞬は皆料理に注目するが、すぐにテーブルに話題を戻す。
「でさ、玉にはガヤから言っといてよ」
「え、さすがにそれはもうマズいっすよ。事務所通さないと(苦笑)」

おや、玉ちゃんにお仕事発注ですか。
一度テーブルに大皿を乗せ、人数分にサーブしていく。

「えー、あいつ事務所、吾郎のトコだろ?大ジョブっしょ」
「や、だったら尚更、木村さんが稲垣さんに言って下さいよ(笑)」

そうだそうだ、玉ちゃんの事務所の社長さんも、お仲間なんだっけ。
なんて事を考えながら、人数分に取り分けた皿を各人の前に配膳していく。

「玉森くん、可愛いよねー!私今一番好きな顔だわー。一緒にお仕事出来るなんてラッキー」
奥に座ったオリエンタルな雰囲気を漂わせた切れ長の美人が、色づく。
ファッション誌をほとんど見ない私ですら見覚えがあるのだから、きっと凄く有名なモデルさんなんだろう。
ぐっ、やっぱり玉ちゃんは人気ものなの…ね。。。

失礼しましたー、と会話の流れを邪魔しないよう、ほとんど聞こえないような挨拶で部屋を出て、扉に手をかける。
そのスライドのスタートとほぼ同時に「ね、玉森くんって彼女いるの?」と言う黄色い声が鳴り
続く「狙っちゃおっかなー」と言うフレーズでは、まさに耳を塞ぐように扉がピタリと閉まった。

別に…私が気にするような事ではない。
誰が誰に色恋を持ちかけようと、それは人の自由だ。
ただ、このモヤモヤは何だろう。
気持ち、言葉、言の葉、声。
声とは声帯を振動させて口から発せられる有声音と、声帯振動を伴わない気息的な音による無声音に分けられるそうだ。
私の気持ちは、無声音によって吐息と一緒に吐き出すしかないのです。
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