第7章 バイト〜藤ヶ谷編
初めて会ったあの日、ソファで目を覚ました太輔は薄暗くなり始める部屋で独りきりになった恐怖を感じていた。
空間での無意味な独りは、苦手だ。
物心ついたころには、既にみんながいた。
それ以前の、はっきりと記憶に残る前の影響なのか、全身全細胞が無意識に独りを拒むのだ。
「みんなどこいっちゃたんだよ…」
身体を丸める様に自らの両腕で両膝を抱え込みひとりごちると、無いと思っていた反応があった。
「…んー?」
驚いて声のする方に目をやると、今朝会ったばかりで自分を突き飛ばした女の子がテーブルに突っ伏していた。
よく見ると、彼女はまだ夢の中のようだ。
無防備だな…。
彼女の顔に触れようと迷い無く伸びたハズの手が、1mm手前で止まった。
寝息に安らぐ唇を、みずからの唇で塞ごうかと近づけた顔も。
…調子狂うなぁ。と内心で思いながら、距離を保ちつつ、暫くその寝顔に見入っていた。
彼女は自分の髪の毛が鼻先にあたってくすぐったいのか、顔をしかめたり、口をむにゃむにゃさせたりと、せわしない。
その様子を眺めなから太輔は何か温かい、初めて感じる気持ちで満たされて行く感覚をつま先から脳天へ感じていく。
体の芯がムズムズする。
くすぐったいような気がして、自らの胸の辺りを掴む。鼓動の高鳴りを感じた。
ふと目をやると、少年のように無邪気な笑顔で笑っている自分の顔がガラスに写っていた。
太輔は、ボロボロになりながらも一人の漢としての強さを見せつけた弟の答えを思い出していた。
「ん?なんでって…それが愛情ってモンなんじゃない?たい兄はそういう風に想えた子、いない?」
…いなかったよ今までは。
もしかしたら、コレが初めてかもな。
自分が傷つく事以上に、相手を傷つける事が
コワイとオモウナンテ。