第2章 災難《黄瀬涼太》
「もしかして、夜這い?」
「なっ!違っ」
「ふーん、そうなんだ。俺はてっきり、1人が寂しくなったから俺のとこにきたのかと思ったんスけど」
「え…?」
黄瀬君の探るような瞳にドクドクと心臓が唸る。
「だって、女の1人旅なんてよっぽどのことがないとしないでしょ?だからオネーサンも何かあったのかなーって」
私の手首を掴む黄瀬君の力が少し強くなった気がした。
この子は鋭いなぁと思った。
嫌になるぐらい。
やっぱりモテる人は女心にも目敏いのだろうか。
私が1人旅をした理由。
それは、2ヶ月ほど前に彼氏にフられ、やっとまとまった休みのとれた私は傷心旅行として今回の1人旅に臨んだのだ。
黄瀬君が言う“よっぽどのことがないと”に当てはまるかどうかは分からないが、私的には当てはまると思う。
「図星……?」
否定しない私を黄瀬君は面白くなさそうに見つめると、掴んでいた私の腕を自分の方へ引き寄せる。
「っ…!」
そのせいで私はバランス崩してしまい、黄瀬君へ覆い被さるような体勢になってしまった。
「ねぇ……、オネーサン」
黄瀬君はもう片方の手で私の後頭部を引き寄せ、耳元で甘く囁く。
「俺が慰めてあげようか……?」