第2章 災難《黄瀬涼太》
夜もだいぶ更け、そろそろ寝ようとなった私達はお互いの布団へ潜り込む。
私と黄瀬君の間には衝立という壁が1枚。
その壁越しに他愛もない話を交わしていると、しばらくして黄瀬君の返事が無くなり、スースーという規則正しい寝息が聞こえてきた。
(黄瀬君寝ちゃったのか……)
残念な気持ちと同時にふつふつと湧き上がってくる少しの好奇心。
(ちょっとだけなら良いかな…?)
実は、あまりの緊張のせいで彼の顔をよく拝めていないのだ。
こんな超人気モデルと同室で一泊を過ごすチャンスなんて、きっとこの先もう無い。
だったら今の内にその綺麗なお顔を見納めるべきじゃないのか。
変な使命感に駆られた私は、衝立を越え布団の中で気持ち良さそうに眠っている彼へ近付く。
(やっぱり綺麗な顔してるな……)
小さな顔、女の子にも負けない長い睫毛、スーッと鼻筋の通った高い鼻、形の良い薄い唇、どこのパーツをとってもパーフェクトだ。
うっとりと彼の寝顔に見惚れていると、私はほぼ無意識で彼の方へ手を伸ばしていた。
そして彼の頬に指先が触れた瞬間、眠っていたハズの黄瀬君にパシッと手首を掴まれていた。
「っ…!?」
「何しようとしてんスか、オネーサン?」