第8章 誕生日 11/8ver.《降旗光樹》
「あのさ……、抱き締めても良い?」
一瞬目を丸くして、すぐに柔らかく微笑み「良いよ」と言う彼女。
俺はゆっくりと真由美の背中に手を回してぎゅうっと抱き締めた。
「キス…、しても良い?」
「良いよ」
俺の腕の中から見上げてくる彼女の唇に、そっと一回触れるだけのキスをする。
顔を離せば、閉じられていた彼女の瞳がゆっくりと開いて、俺達は少しの間見つめ合った。
「んっ……、」
もう一度合わさる俺の唇と彼女の唇。
その一回だけじゃ足りなくて、何度も何度もキスをした。
やがて薄く開く彼女の唇。
俺はその間へ舌を滑り込ませると控えめに絡んでくる彼女の舌ともつれ合う。
「ふっ…ん、こう、き……っ」
「っ……、ごめん」
夢中になって彼女の口内を堪能していると、ポカポカと胸の辺りを軽く叩かれた。
それでやっと苦しかったんだと気付く俺。
「はぁ…っ、謝らなくて良いよ?」
そう優しく微笑む彼女に、俺は何ともいえない愛しさが募って。
凄く……抱きたいと思った。