第8章 誕生日 11/8ver.《降旗光樹》
「うん…。俺、真由美が痛がってるトコとか見たくねぇし……。大事にしたいんだ」
俺がそう言うと皆黙り込んでシーンとなってしまった。
確かに先には進んでみたいけど、どうしても真由美を傷付けてしまうんじゃないかって怖くて、俺は付き合って半年以上経っても先に進めずにいるんだ。
「けどよー。別にヤる=大事にしてねぇって訳じゃねーじゃん?体重ねるっつーのも、想いを伝える1つの手段なんじゃねーの?」
静寂を断ち切った火神の言葉に、俺たちは一斉に火神の方へ顔を向けた。
皆驚愕の表情を浮かべていて、あの黒子ですら目を丸くしてるんだから、よっぽどのことだろう。
「……驚きました、あの火神君がそんなことを言うなんて」
「“あの”って何だよ…」
「自分で考えて下さい」
火神と黒子がいつものやり取りをしている間、俺はずっと火神の言葉が頭の中でグルグル回っていた。
〝体を重ねるのも想いを伝える1つの手段〟
俺の真由美を好きっていう気持ちと大切にしたいっていう気持ちが今よりも伝わるなら、俺は真由美と体を重ねたい。
先に進みたい。
この話の後に食べた肉まんはほとんど味がしなくて、俺は真由美のことばかり考えていた。