第7章 誕生日 11/2ver.《灰崎祥吾》
「どう?!美味しい?」
「不味い」
「なっ…!せっかく人が作ってあげたのに、何その言い草!!」
「別に頼んでねーだろ、俺はァ。これならコンビニの唐揚げ弁当の方が旨いっての」
「〜〜っ!ほんっと、アンタってムカつく!!」
ギロリと殺気の含まれた目つきで睨まれる。
仕方ねェだろ、俺はお世辞とか言える質じゃねェんだからよォ。
それにコイツの作った唐揚げ、めっちゃ焦げてるのもあれば衣が剥がれかけてるのもあるし、ヒドイやつは中身に火が通り切ってないモンまである。
そりゃコンビニ弁当のが旨いに決まってんだろ。
(けど……)
「オイ!何捨てようとしてんだ!」
真由美は席を立ったかと思うと唐揚げの入った皿を流しの方へ持って行こうとしたので、俺は焦って止めに入った。
「はぁ?アンタが不味いって言ったんじゃん!!」
「貸せ!誰も食わねーとは言ってねーだろーがァ!」
不恰好な唐揚げが大量に入った皿を真由美から無理やり取り上げる。
「勿体無ェから全部食う!」
「不味いのに?」
「食えねー程じゃねェよ」
「……ほんと、ムカつく」
まだ不貞腐れてるような顔はしているようだが、さっきよりはマシみてーだ。
(あー、不味ィ……)
確かに味は悪いんだけど、何でだろうな、全部食いたいって思っちまうんだよなァ。