第7章 誕生日 11/2ver.《灰崎祥吾》
台所に近付くに連れ、香ばしい揚げ物の匂いが鼻を擽った。
俺は自分の好物を思い浮かべながら、既に箸が並べられている机の側の椅子へ腰を下ろす。
「じゃーん!唐揚げを作ってみましたぁ!!」
の声と共に机のど真ん中に大量の唐揚げが入った皿を置かれる。
俺は自分の期待していた物が目の前に出されて、多少驚いていた。
「ショーゴ、唐揚げ好きでしょ?」
「何で知ってんだァ?」
「だって、ショーゴたまに私の家にコンビニ弁当買って持ってくるとき、いつも唐揚げ弁当じゃん!だから好きなのかなーと思って」
「…ふーん、なるほどねェ。お前が俺のことよく見てんのは分かったわ」
俺の向かいの席へ腰を下ろす真由美にからかうような視線を送ると、コイツは一瞬目を丸くして妙に切なそうな顔を俺に向けた。
「うん、見てるよ。私はショーゴのこと、いつも見てる」
静寂が俺たちを包む。
俺は何故かコイツから目を逸らせなくて固まっていた。
「ほら、早く食べないと冷めるよ?」
「…おー、そーだな」
真由美の静けさを断ち切る声にハッとした俺は、箸を持ち唐揚げの方へ手を伸ばした。