第2章 災難《黄瀬涼太》
上着を掛けたり、荷物を整理したりしていると、食事の用意をしても良いかと中居さんが尋ねてきた。
「どうせなら一緒に食べないっスか?」
と黄瀬君が言ってくれたので、中居さんに2人分の食事を用意してもらい、私達は机にズラリと並べられた豪華な海鮮料理を一緒に食べることにした。
「美味しい…っ!」
お刺身を一切れ口に運び、あまりの美味しさに感嘆の声が漏れる。
正に頬っぺたが落ちるという表現がピッタリだ。
しばらく料理の美味しさに感動して次から次へと食べていると、黄瀬君が私の顔を見てクスッと笑った。
「え、な…何?」
「いやー、そんな子どもっぽい顔もするんだなって思って」
黄瀬君に突っ込まれるほど私の顔は綻んでいたのか。
恥ずかしさで何も言えないでいると、彼は「良いじゃないっスか!」とニカッと笑う。
「だいぶ緊張が解けたみたいで何よりっス!」
「気遣わせてごめんね…、ありがとう」
年下の男の子に何気遣わせてんだと自分を叱咤するも、彼の優しさが心に染みる。
「いやいや謝らないといけないのも、お礼を言いたいのも俺っスよ!」
聞けば、黄瀬君は今日この旅館の近くで撮影があり予定より長引いたため、この旅館に直前予約をしたらしい。
そのせいで手違いが起きたんじゃないかと言う。
「でもそのおかげで、こーんな美味しい料理が全部タダになるならラッキーっスよね!」
「ふふっ、そうだね」
確かに黄瀬君の言う通りかもしれない。
男の人と相部屋になると聞かされたときは正直嫌だったけど、相手が黄瀬君なんて私は本当にラッキーだ。
それから、元々お喋り好きなのか色んな話をしてくれる黄瀬君のおかげで楽しい食事の時間を過ごすことが出来た。