第5章 誕生日 10/30ver.《氷室辰也》
「じゃーなー、辰也ぁああ!!」
「あぁ、今日はありがとう。気を付けて帰れよ」
「大丈夫!アタシらが送ってくから!駅までだけど」
「んだよ、駅までかよ〜」
「当たり前でしょ!ほら、もうすぐ終電なんだから急いで!!」
ベロンベロンなチームメイトは彼女達に介抱されながら駅の方へ向かっていった。
あんなにベロンベロンなのに、俺が居酒屋で支払いを済ませようとすると「主役が何してんだ!誕生日なんだから俺らが奢る!!」と豪語されたのには驚いた。
それと同時に感謝も。
だんだんと小さくなる背中を真由美と2人で見送る。
「真由美だけ違う駅なんだよね?俺が送ってくよ」
「え、良いよ…。悪いし」
せっかく2人きりになれたんだ。
ここで引き下がる俺じゃない。
「夜道に女の子1人じゃ危ないだろ?送ってく」
「…ありがとう」
俺の押しに負けたのか、やっと彼女は了承してくれて、駅までの道のりを2人並んで歩いていく。
飲食店が立ち並ぶネオン街を抜ければ、そこはやけに静かでまるで俺達2人しかいないような、そんな錯覚を起こした。