第3章 誕生日 10/9ver.《紫原敦》
夕飯を食べ終わり、ついに今日のメインであるホールケーキをあっ君に差し出すときがやってきた。
私は一旦台所に戻り、冷蔵庫の中からケーキを取り出し、あっ君の元へと運ぶ。
そして、リビングまであともう少しというところで事件は起きてしまった。
ズルッ べシャッ___
私は足をもつれさせ転倒してしまったのだ。
「………嘘」
せっかく気合いを入れて作ったホールケーキは見事にグチャグチャになり、私の身体も床もクリーム塗れだ。
「まゆちん、変な音したけど大丈……」
あっ君は私の姿を見るなり、目を丸くし言葉に詰まらせる。
「あっ君、ごめん……っ。ケーキが…っ」
(せっかく頑張って作ったのに…)
自分のドジのせいで何もかもパァだ。
よりによって、ケーキをこんなにしてしまうなんて。
情けなくて泣けてくる。
すると、あっ君はしゃがみ込んで
「まゆちん泣かないで?」
と、頭を撫でてくれた。
「あっ君、でも…っ」
「てゆーか、まだ食えるし」
あっ君は私の身体の上で散らばっているケーキの欠片を手に取り、そのままヒョイっと口へ放り込んだ。