第3章 誕生日 10/9ver.《紫原敦》
玄関の鍵を開けると、それに気付いたあっ君が外からドアを開ける。
中に入ってきた彼の姿が見えた瞬間、私は「あっ君、誕生日おめでとーっ!!」の掛け声と共に、持っていたクラッカーをパーンと鳴らした。
「わぁ〜、ビックリしたぁ〜!」
その言葉とは裏腹に、彼はいつも通りのゆったりとした間延びした声なので拍子抜けする。
でも、その目は見開いていて多少は驚いてくれたことが分かった。
「部活お疲れ様!もう準備できてるから、早く中入って」
「ほんと〜?やったぁ」
一緒にリビングへ向かい、あっ君がソファで寛いでいる間、私は作っておいた夕食をテーブルの上にズラーっと並べていった。
その間あっ君は飾り付けしていた部屋や、どんどん出てくるおかず達に「凄いね〜」とか「こんなに作ってくれたの〜?」とか感嘆の声を漏らしてくれて、頑張ったかいがあったなと思った。
「じゃあいただきま〜す」
「うん!いっぱい食べてね!!」
部活の後のせいか、あっ君は凄い早さでご飯をたいらげていった。
1歳大人になっても、箸の持ち方が相変わらず汚かったり、ポロポロと食べカスをこぼしたり、子供そのものな彼の様子に、クスッと笑ってしまう。
そんなところも可愛いなんて思ってしまう私は、どうしようもなくあっ君にベタ惚れなのだ。