第2章 災難《黄瀬涼太》
旅館を出て、来たときと同じようにGoogl○マップを頼りにバス停へ向かおうとすると、黄瀬君が「俺、この辺り詳しいっスから」と着いてきてくれることになった。
方向音痴なのでこの申し出は素直にありがたい。
そして迷うことなくバス停へ辿り着いた為、次のバスが来るまでだいぶ時間に余裕があった。
黄瀬君も一緒に待ってくれるらしい。
少しでも長く一緒に居られるのは正直嬉しいんだけど、こう優しくされると、本当に黄瀬君のことを好きになりそうで恐い。
「……。」
前日の情事後のような気まずい空気が流れる。
すると、黄瀬君は「あの……」とおずおずと私に話しかけてきた。
「昨日のこと怒ってるっスか?」
「…怒ってないよ。あれは合意の上だったじゃない」
「や、でも、ほぼ無理やりっていうか…っ」
昨日のことを気にしてか歯切れの悪い彼に「本当に怒ってないから」と苦笑する。
「今度、お詫びに何か奢るっス!」
「……年下の男の子に奢ってもらうのも何か悪いし、遠慮しておきます」
えーっと唇を尖らせる彼に、思わず口元が緩む。
「じゃあ…っ」
彼は鞄の中からスケジュール張のようなものを取り出し、ボールペンでサラサラと何かを書くと、そのページをビリッと破り渡してくる。