第2章 #1 特別研修医
夕食の後片付けをして、3人は再び椅子に腰掛けた。
「実はさっき、陽南大学附属病院の院長先生から連絡があってね。望愛に特別研修医として病院に学びに来て欲しいって依頼があったんだ。」
「え、ほんとなの?望愛」
「うん」
宏明は話を続ける。
「望愛は、学ばせて下さいって言ったんだよね」
「うん。私、ノリで言ったんじゃないよ。待ちに待ったチャンスだもの」
「チャンス?」
「お母さんとは違う医者になる為の…。今の私には、医者はお母さんただ1人。だけど、私は医者としてのお母さんを許せない。だって、お母さんは患者さんを死なせちゃって自分も死んじゃったんだよ?お母さんは生きて患者さんの遺族を支えてあげないといけなかったのに…!」
「望愛、それは言い過ぎだよ…」
愛結は、声を荒らげる望愛を優しく落ち着かせた。
「だから、私は色んな医者をみたい。色んな医者の元で学びたい。お母さんがした事は、本当に正しかったのか…。私ならどうするのかを知りたいの」
「望愛…」
望愛の必死な顔に、愛結は何も言えなかった。
「学んでおいで、望愛。お父さんも、いつか望愛が導き出した答えを聞きたいんだ」
「え…いいの…?」
望愛は父の予想外の言葉に驚いた。
「望愛が陽南の医療コースを受験したいって言った時から、いつかこうなるんじゃないかって思っていたからね。ただし、普段の勉強もしっかりする事。学生生活を満喫しなさい」
宏明は優しく言った。
愛結も「頑張れ!」と励ましてくれた。