第3章 #2 HOPEの医師達
「奥原先生、落ち着いて下さい。私からの説明が足りませんでしたね」
カンファレンス室に入ってきた畑山は、そっと望愛と飛馬に近寄った。
「皆さん、この2人は確かに医師免許を持っていません。本来ならば、中学生である2人が本場の医療現場で働くなど有り得ません。ですが、彼らはまだ《学生》です。2人には学ぶ権利があります。私はこの2人に『現場で医療を学びなさい』と言いました。この2人は《働く》のではなく《学ぶ》のです。もちろん彼らには、雑用をメインにしていただきます。診察も治療もさせません。それでもまだ何か問題がありますか?」
畑山の言葉には断定の意志があった。
「院長がそこまで言うなら…分かりましたよっ!受け入れればいいんでしょ!」
奥原がそう言うと、畑山はにっこり笑って望愛と飛馬の方を向いた。
「神瀬先生、馬渕先生。私からこのチームの説明をしましょう。あなた方がこれから学ぶチームは一般に『HOPE』と呼ばれています。患者を救う砦―。『希望』となれ。という意味です。ここにいる先生や看護師は、患者と真摯に向かいあって治療にあたっています。あなた方が医療を学ぶにふさわしいと思いますよ」
そう言うと、畑山は西田達に目配せをして退室した。
畑山が居なくなったのを確認すると、西田は2人に他のメンバーの名前を教えた。
先ほど荒れていた奥原は、外科で西田と1・2を争う天才外科医。
弱々しそうな若手の医師は、須藤と言い、西田がかつて教育係をしていた。
神田は外科で一番のベテラン看護師で、師長を務めながらオペ看もこなすHOPEの縁の下の力持ちだ。
また、カンファレンス室には来れなかったが、救命医の秋野という女性医師と、内科医の渡辺という男性医師もチームのメンバーだという。
一通りの紹介を終え、メンバーはそれぞれ自分の持ち場に戻った。