第2章 #1 特別研修医
「畑山さん、紹介します。こちらにいるのが、我が校の医療コース1年生の神瀬 望愛さんと馬渕 飛馬くんです」
50歳手前の校長に紹介された2人は、目の前の畑山という老人と握手を交わした。
「君達が、孫の命を救ってくれた恩人かね?」
「お孫さんでしたか。もう退院は…?」
飛馬が尋ねる。
「孫なら先ほど無事家に帰ってきたよ。君達に会いに行くと言ったら、『私も連れて行って』の一点張りでね。ただ、まだ安静にしているべきだと説得して、置いてきたよ」
畑山は少し笑みを零して言った。
「安心しました。退院おめでとうございます」
望愛も声をかける。
「だがね、君達に会いに来たのは、礼を言うためだけではないんだ。君達にとっておきの提案をしに来たんだよ」
「「とっておきの提案…?」」
2人は思わず声が揃った。
「私が院長を務めている陽南大学附属病院の特別研修医として現場の医療を学んでみないか?という提案なんだが」
校長室の空気がしーんと静まる。
「私達が…ですか?」
「他に誰がおるかね?」
望愛の質問にも即答してきた。畑山は本気で言っている。誰もがそう思った。
「「ぜひ学ばせて下さい!」」
望愛と飛馬はまたもや声を揃えて、言った。
((なんでかぶるのよ…/んだよ…))
「その返事を待っておったんだよ!だが、それには君達だけの判断では認められない。親御さんに連絡させて貰うから、親御さんの承諾を得て、正式に学びに来て頂く。それで良いかね?」
畑山は、心底嬉しそうな顔をしつつも、真剣な表情で2人に言った。そして、その言葉に2人はしっかり頷いた。