第2章 #1 特別研修医
陽南大学附属中学校は、20年前に創立された比較的新しい学校でありながら、地元内外関わらず中学受験をする受験生達の中では、必ず1度は行ってみたいと言われる超人気校だ。
その理由は、中学校とは思えない、ハイレベルな教育方針と、生徒達の品の良さ、教師陣のレベルの高さとそれに比例した彼らの生徒を思う熱意の強さにある。
中学校から学科に特色があり、俗に『普通科』と呼ばれる偏差値68を誇る『文理特進コース』に、各種スポーツの実力者を集めた『スポーツ選抜コース』、世界で活躍出来る人材を集めた『国際養育コース』、そして、新設された陽南大学医学部と連携を組んだ『医療コース』。
陽南大学附属中学校への入学は、圧倒的な受験倍率と、専門分野に特化した人間のみが許されると言っても過言ではないのである。
そんな陽南では、学年全体で毎月実力テストがあり、その上位3名は月初めの全校集会で、表彰される。これは生徒にとって大変名誉な事である。
そして昨日、女性を助けた男女2人は、共に一学期全て主席で表彰されていた。
「望愛〜!おっはよ〜♪」
そのうちの少女の方、神瀬 望愛は1年A組―医療コース―の生徒で、文理特進コースの生徒で、小学校からの親友・眞鍋 紫音に名前を呼ばれて、歩いていた通学路で立ち止まった。
「おはよう、紫音」
「望愛、昨日特別講座遅れたでしょ。ひなのちゃんが私に聞きに来たんだよ?」
『ひなの』というのは望愛のクラスメートで栗野ひなのという女子生徒だ。
「ごめんね、紫音。ひなのちゃんからちゃんと聞いたよ。昨日、道で倒れた女性を助けてたら遅れちゃって…。先生には理由を話したから安心して?」
「本当にびっくりしたんだから〜。望愛に限って遅刻なんて有り得なかったし、もしかしたら望愛の方が倒れたんじゃないかって…」
友達思いの紫音は頬を膨らませる。望愛は謝りつつも紫音の気持ちを嬉しく受け取っていた。