第2章 act1
は微動だにせず月を照り返す波間を見つめていて。
「ねぇいつまでそこに突っ立ってるの」
綿の様に柔らかに耳へ届く彼女の声。
「お前がそこにいる目的が解らねぇからな。いつ俺達の船を襲ってくるかも知らねぇし」
「それ本気で言ってる?」
「さぁな?お前次第だ」
「ふふ…毎日私はここへ来るの。そしたら今日は黄色い船が止まってた。以上よ?」
一つ彼女の事を知った。
もっと知りたい、そう貪欲に思う。
得体の知れない感情が身体の底から湧いてきて、自分に恐怖する。
「分かったよ。あぁそうだな、この島は気候は厳しいが治安も住民もまぁ悪くない。それは知ってるだろ?」
「ええ、もちろん」
「だが、刺激が足りねぇんなら」
俺は何を言い出すつもりなんだ。
「俺と来るか?」
名前しか知らない女に。
「…海へ?」
「……冗談さ」
小さく笑みを浮かべながらローはの横を過ぎて行った。
振り返る事もなく、呼び止められる事もなくローの足は船へと進む。
足早に自室を目指す。
ペンギンはまだ店にいるのだろう。
顔を合わせなくて済み良かったと思う。
何故なら表情で悟られてしまわないか心配だから。
失った平常心に。
抱いた恋慕に。