第2章 act1
「…許可が必要とは思わなかったな。この島の出でも」
「へぇ貴方ここの出なんだ。じゃあ里帰りへ来たの?」
「海賊にも故郷は恋しいさ」
少し飲み過ぎただろうか。
平静さを繕うのが上手くいかない。
「あんたもここのモンか」
「ええ、そうよ。ねぇ海賊なら色んな島へ行くんでしょ?私ここ以外出た事ないから、いつも海を見て想像しているの」
ねぇロー、私想像しているのよ。
この海の向こうにはどんな世界が広がっているのか。
早くローと見てみたいな。
「っ…」
脳の中で木霊する彼女の欠片。
それはまるで生き写し。
「…お前名前は?」
「貴方が名乗ってからにしようかな」
悪戯に肩をすくめた女にローは口許を上げる。
「そうか。島を出た事ねぇ上、あんた海賊に臆しないだろ?俺の事を知らねぇ訳だよな」
「それって自意識過剰?」
鈴の様に肩を揺らして笑う彼女は人形の様だ。
「ローだ。トラファルガー・ロー。で、あんたは?」
まくし立てるように早口で告げ、嫌とは言わせぬ威圧感を乗せれば女は素直に答えた。
「よ」
やはり聞き覚えのない名前だった。