第6章 act5
「…キャプテン、ちょっといいっすか」
「ペンギンか、なんだ」
静かに開いた扉から副船長の顔が覗く。
なかなか口を開かないので暫く睨みを効かせていたらペンギンはゆっくりと話し始めた。
「ここに帰ってきてから、単独行動が多いなと思ってたが、あの女だった訳ですか」
「………」
「もう落としたか喰ったんですか?」
瞬間ローの眉が小さく動く。
「何が言いたい」
「フランを重ねているんだろう」
ローの眼力はより一層鋭くなる。
「…なんだと?」
「あの女、フランに似ている。本気なんすか」
「別に…」
「困るんすよね中途半端じゃこっちが。飽きては捨てを繰り返すキャプテンだし?ただの性欲処理なら俺らは指咥えて見てるしかないっすから」
「ふざけた事言うな。バラされてぇのか」
ペンギンは予想以上のローの重症さに苦笑いだった。
「ムキにならないで下さいよ、珍しい」
彼にはという女がキャプテンの中でどういう存在なのかほぼ見当がついていた。
彼は他人を自室へ入れるのを非常に拒む。
よっぽどの仲でないと一歩でも踏み入れさせない。
にも関わらずおそらく出会って2、3日のを部屋に連れ込んだ。
それは彼女だからだ。
ローは彼女に特別な感情を持っている。
クールでポーカーフェースなどと巷で囁かれているが長年共にいれば表情仕草などから彼の事など容易に図り知れる。
先程の態度だって明らかに今までとは違い、恐ろしい程の独占欲の現れだったはず。
「おいペンギン、一体何が言いてぇんだ」
ローの機嫌の悪さは沸点間近。
「だから。予定では明日ここを出ます。ケジメ、つけて下さいよ?あんたはこの船のキャプテンだ。あんたが迷ってちゃ俺達は前に進めねぇ」
少しの沈黙を置いてからローはゆっくりと紡ぐ。
「…あぁ、わかってる当たり前だ」
ああ、そう。
この眼。
俺達はこの眼に信じ賭けてきたんだ。
揺るぎない情熱と絶対的な自信を持った眼差し。
うちのキャプテンは、こうでなくては。