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一輪の花

第5章 act4





「…チッ、来い」

「あっ、ちょ…っ!」



腕を掴まれ、強引に引っ張られる。
こっちの歩幅なんかお構い無しにずんずんと進むローに、足がもつれそうになるのと同時に掴まれている所が痛い。
その握る強さは振り払える程容易ではなくてはただ困惑する。

怒られる、そう脳が危機した。



部屋に連れてこられローはやっと掴んでいた腕を解いた。
見ればやっぱり少し赤くなっている。

ローの出方を見計らっていたが、重圧に耐え切れず口を開いた。



「…ごめんなさい」

「ったく馬鹿野郎」


それはそれはローの表情は最悪で。


「何しに来たんだよ」

「………」


盛大な溜息と飽きれた視線。


「ごめんなさい…」


初めて目にした彼の様子には自分のした事がどんなに愚かだったか思い知る。

「女のお前がこんな野郎ばかりの海賊船に一人で来て見ろ⁉︎俺がいなかったらどうするつもりだった」

ローは苛立っていた。

が船に興味を持つのは別に構わない。
それが自分に会いたいからではなく、ただ遊びに来た程度でも百歩譲って良かった。

だけど自分の許可がない所で行われているのが気に入らないのだ。

俺の目の届かない所であんたがどんな思いをするのか、想像しただけで許せない。

理由なんて一つしかない。

クルーへ無防備に足やら胸やらさらけ出して。

下品な笑みを浮かべてを舐め回すに決まっているから。

そしてこれは、俺の嫉妬だった。

独占欲

つまり、そう。


今だっての目は今にも涙が零れ落ちそうで赤い肉厚の唇は強く噛み締められている。

そんな顔を他の誰かがさせたとしたら、気が狂いそうだ。





「帰れ、迷惑なんだよ」

「……ッ、」




は部屋の扉を開け放ち、走り去って行った。


泣かせてしまった。












「…何やってんだ俺…。餓鬼か」


ローは帽子を壁に投げつけ、頭を掻きむしった。







が泣きながら部屋を飛び出して行く様子をペンギンは遠くから見ていた。
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