第5章 act4
「おい!シャチとベポが女連れて来たぞ!」
「女⁉なんだって⁉」
それは見張番の男の一声から風のように一目散に伝わり船にいたクルー全員が階段を登ってくる者に注目した。
「…お邪魔しま〜す」
「ここが甲板、皆大体ここで持ち場の仕事をしているかな」
「うわ〜凄い…!」
にとって今はもう初体験ばかりが襲ってくるから心拍数はかなり上がっていた。
遠くから見ているだけだった海賊船に自分が乗っている事が信じられない。
またそこにいた想像以上の人の多さと全員白基調のつなぎ姿に圧倒される。
「お仲間さん、いっぱいいるんですね」
「今いるのはまだ半分くらいだよ。海賊怖くないんだね」
「うーんまぁ怖くないって言うか、フリーで楽しそうだなぁ…なんて思うかなぁ」
確かに恐怖心はなかった。
自由に世界中を謳歌し、己の目標へと突き進む海賊を羨ましいとさえ感じる。
「変わってんなぁあんた」
暫く他のクルーから尋問にあっていたシャチが口を開く。
「よく言われます…」
実際はよく変わっていると言われる。
ここの船長にも言われた。
そんなに他人と思考回路がずれているのだろうか。
「でもの良い所だと僕は思うよ?」
「ベポ…ふふ、ありがとう」
心優しい白熊にの緊張していた心は束の間和らぐ。
暫くベポの案内で船内を散策させてもらっていると、どうやら私は相当の珍客みたいだ。
先程から周りのクルーの声が嫌でも耳に入ってきてしまう。
「なぁ船長の女って本当か?」
「いやわかんねぇが、多分そうだろう」
「でも船に上がってくるなんて今まで前例がないぞ⁉」
「だよな。チキショー、でも俺超タイプ。見ろよあの胸! 今夜のオカズだ」
「はっはっ‼ 拝んどこうぜ」
私、場違いだっただろうか。
勢いで来てしまったが、なんだか向けられる視線が痛い。
その刹那。
ピタンと止んだクルーの会話。
「どけ」
一際低い声が響いた途端、辺りの空気はまるで硬直。
張りつめた緊張感が纏う。
あっと言う間に目の前に道が開いて、そこからこちらへ一直線に歩いてくる、
今の私の救世主、船長さん。
なんか今日は一層怖い顔をしているような気がするのだが、あながち外れていないみたいだった。