第1章 銀魂:沖田
「何言ってんだ、アンタだけでさァ、何しようと俺がこんなに許せるのは」
海のように広い心が一気に銀河系を飲み込む程の広さに様変わり出来るってんだ。充分じゃねえとは言わせねーぞ。そんな強引な自論に少し気恥ずかしくなる。
意地悪で素直じゃなくドエス中のドエスを名乗る私の彼氏様は、それはもう世間からの風評や見聞と比べると目に見えている彼は到底かけ離れていた。何も言わないけれど、何時も出かける時は必ず手を繋いで先導してくれる。不意に綺麗だと感じたものを見せに連れて行って喜ばせようとしてくれる。
今だって、私に似合うと思って簪を買って持ってきてくれたのだ。
仕事の帰りに、犯行現場の凶器にお前の指紋をつけようと思ってだとか色々と理由をつけて送られたが、過程は何であれ、彼の愛情は比べるまでもなく私に注がれていた。
思い返せば思い返す程、顔が熱くなりはじめ、必死に赤い顔を覚まそうとするが、そうは問屋が卸さない。
「おら、今なら一名様限り空いてますぜ」
表情を隠す間なんか与えない、そんな態度の彼に思わず心が揺れるがこんな公衆の面前で素直に飛び込める訳がなく、余計恥ずかしさに顔が熱くなり俯けてしまう。周囲の目なんて気にしない彼は単に遊んでいるのだろうか、目線だけ、そっと上げると沖田さんは変わらず両手を広げたままで、じっと私を見ている。
違うのは、視線が合わさったと同時にほんのりと笑ったことだろうか。
「おいでなせぇ」
命令口調ではない言葉に、結局私は逆らうことなんて出来なくてー
埋もれた先の愛しい人は、また最初に呟いた言葉を惜しみなく吐くのだから、喉から溢れた溜息は酷く甘かった。