第1章 銀魂:沖田
「ほんと、愛い奴」
その一言に、思わず勢いよく振り返ってしまった。
往来の中、人ごみの所為でか聞き間違いだったのだろうか。挙動不審な私に何度も瞬きを繰り返し小首を傾げる少年は特に不快な顔をすることも、にやりと鴨を見つけた悪い顔をすることもない。
「なんでえ、そんな不審者を見つけるような目しやがって、こちとらテメエ見たいな愚図に捕まってやってるスーパーイケメンのイタイケな恋人様なんでぃ」
「さっきまでの素敵な表情を返して!ああもう言葉で台無しにしないでよ!」
「警察に喧嘩売るたあいい度胸でさァ、ほらさっさとお縄について屯所へ行きやすぜ」
「恋人を!屯所へ!持ち込まないで!!」
「大丈夫、自主した方が罪は重くならないもんだオメエの実家の婆ちゃんも望んでるに違いねえや、物の次いでに近藤さんにでも俺の公務執行妨害専門科件恋人って紹介付きともなりゃ、くそ土方も喜んで土下座でも靴の裏を舐めるでもなんでもしてくれるってもんだ」
「絶対土方さんそんなことしないよね、多分怒っちゃうよ!あとお婆ちゃんもう居ないから!!」
すき放題に喋る彼への対応を何とかやりきり、手錠を掛けられずに済んだが、このままだと今の話題を続けてくるだろう。アンタの為だとか言って本当に警察署へ連れ込まれる可能性だってある。
先手を打たれる前にどうしてそんな風に意地悪なことばかり言うかな、責めるよう言葉を付け足してから、少し怒った振りをする、けれど私が怒ったところで何の屁でもないかのよう蜂蜜よりもうんと綺麗なキラキラした髪を靡かせ彼は笑う。