第2章 非日常の始まり
もう一度先程の女性を見てみる。
客が会計をしているのか、客人とワイワイ談笑しているようだ。
僕は自然に品物を見るふりをしながら、トマトの棚に背を向け、後ろに置いてあるトマトを手に取った。
――そして。腰の辺りからトマトを中に入れた。
すぐに服を下から引っ張り、膨らみが不自然じゃないようにたるみを作る。
してはいけないことをやっている。その自覚はあった。
でも、仕事をしてない時はずっとこれをやっていて、すこし慣れ始めつつもある自分がいる。
僕は続いて2個目……そして3個目に手を出した。その時。