第2章 非日常の始まり
――それは、とても愚かで罪深い行為。
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「朝イチで獲れた野菜だよー!」
宿を出るとすぐ聞こえてきたのは、そんな声。
そちらを見てみると、八百屋と思われる店の前で若い女性の商人が客を呼んでいた。
その傍らには、色とりどりの野菜や果物が箱詰めにされている。
客人は多くもないし少なくもない。商人はどうやらあの女性だけのようだ。
……この店ならいけそうだ。
僕はそう思い、店の前にいる人達の影に上手く紛れながら店に入った。女性は僕には気づかず、まだ大声を出して客を勧誘している。
あたりを見渡すと、まずすぐそばにあったトマトが目に入った。よく熟れている、真っ赤なトマト。