第2章 非日常の始まり
「……あ」
唇の間からそんな声が漏れたのを自分で聞いた。
手に取ったトマトを背中に入れたとき、少し遠くにいた50代くらいの女性と目が合ってしまった。
冷や汗が頬を伝い、トマトを放り投げるように棚の中に戻す。
しかし、もう手遅れだった。
「泥棒…
あの男、今何か背中に入れた!泥棒よ!!」
ザワッ、と店の中どよめく。
まずい。
僕は店から飛び出した。
「逃げたわ!!泥棒よ、誰か捕まえてっ!!」
背後からそんな声が聞こえる。なんでそんな無駄に声がでかいんだよ。
人混みができていたが、なんとか強行突破する。途中でトマトが落ちてしまったが気にしない。