第2章 非日常の始まり
「……あの、なんか、少なくないですか」
僕は睨みつけない程度に、じっと男を見つめる。
貰った紙幣は、いつもより倍少ないものだった。
すると、男は人を馬鹿にするように小さく鼻で笑った。
「だってリヒト君、なんか今日苛ついてるし……
もっとお金欲しいならサービスしてね」
そう言ってつぶらな瞳でウインクすると、男は部屋か ら出て行った。
……誰がサービスするかっての。
誰もいなくなった部屋で、密かにそう呟いた。
いや、そんな事よりも金をどうにかしなくてはいけない。
今一度束ねた紙幣を確認してみる。
普段貰うのは食料一週間分。
今日のは一日一食でも4日分といったところか。
うまい具合に食べる日を配置しても、かなりひもじい生活になるだろう。
次に依頼が入るのはいつなのか分からないのに、空腹時に仕事でも入ったら不手際を起こしてしまうかもしれない。
どうにかして食料を得なければ……。
ゴミを漁るか。いや、あれはこの前やってた時に腹を壊して逆に空腹になった。
考えて考えて、そして最終的にありついた答えは一つだった。