第3章 とんこつ団という名の組織
やがて階段の上から、足が見え始めた。
情けないほどに白いその足が、次の階段を踏みしめようとした時。
なんと、見事にその段差を踏み外してしまった。
「どわっはぁぁぁぁぁいっ!!」
ズドドドッ!っと派手な音を立て、人間が転がり落ちて来る。
「えええええっ!?」
なんとも滑稽な展開に、僕はただ目を丸くしていた。
クリムさんが隣で鼻で笑ったのは聞かなかったことにしよう。
目の前にまで落ちてきた金髪の男は、痛そうに腰をさすりながら顔を上げると、その蒼い目と目があった。
一重の衣を纏った、少し幼さの残る顔立ちの男性。ルネさんとクリムさんを見た後だと、どうもパッとしない。彼から見ても、美形2人の隣に並ぶ僕は霞んで見えるだろう。
「こ、こんにちは……」
しかし、アジトに来て初めて会う人とこんな形で対面するとは。
少しドキドキしながらも、ペコリとお辞儀をする。
ここにいるという事は、彼も暗殺者の一員なのだろう。慎重にいかなくてはならない。例え階段を踏み外したとしても。
「まあ、入れ」
男性はニカッと笑うと、中に入ってくるように促した。
ズカズカと進んでいくクリムさんの後を追い、僕も階段を登った。
登った先は、リビングの様な広い空間だった。奥には暖炉、キッチン、細長いテーブルにいくつも椅子が並べられている。階段はまだ上にあったようだが、クリムさんはこの部屋で止まった。
「誰もいねーのかよ?」
キョロキョロと部屋を見渡した後、ルネさんの後ろから階段を登ってきた男性に尋ねるクリムさん。
「ああ、狂馬はいるはずなんだが……まあとりあえず座れ」
男性はそう答えると、僕達を抜いてテーブルの上座の椅子に座った。