第3章 とんこつ団という名の組織
船で渡されたパンを躊躇いながらも口にしていること数時間、港と思われる場所についた。
割と外観は水鏡の国と変わらないが、ここに来る前に通った、重々しくにそびえ立つ門に目を引かれた。
やっと地に足をつける事ができた頃には、すっかり日は沈んで既に星がまたたき始めていた。
水鏡の国と違い、真夏とはいえ夜は結構冷え込むようだ。
「さてと、行くぞ」
今まで船乗りと話していたクリムさんがそう言った。
なんだか、いつの間にか僕がアジトに行く前提になっている気がする。
「いや、帰らせてください」
僕がそう言うと、クリムさんは途端に顔をけわしくした。
「はぁ?お前ここまで来て帰るのかよ?」
そんな事言われても、無理矢理連れてこさせたのはアンタらだろう。そう思ったが言うと怒られそうだからやめておく。
ルネさんなら話せば帰らせてくれるだろう、と彼女を見てみると、自分の足元にいるバッタに興味津々なようで僕達の話には全く耳を傾けていなかった。
「僕にも生活があるんです。申し訳ないけど、帰らせてください」
ため息まじりにクリムさんに視線を戻す。
そう、僕にも生活がある。
それが盗みだとしても、中年太りの成金相手の仕事だとしても、それが僕の生活だ。
クリムさんをじっと見つめると、やがて何がおかしいのかフンッと鼻で笑われた。クリムさん程顔が整っていれば、ムカつくものもムカつかない。