第2章 非日常の始まり
「リヒトさん、ですね」
「……え」
突如、そう言われた。
なんで初対面の人に名前を知られているのだろうか。
依頼人という考えもあるが、こんな若い客なんて今までいなかったし、これほどの美形二人組なら……相手くらいいるだろう。
「ふふふ、ごめんなさい。朝からずっと尾行させてもらいました」
なんて悩んでると、とんだ爆弾発言までおとされた。それ、ふふふを付けて言う言葉じゃないよね。
どういう事だ、朝から尾行?
またわけのわからない発言に頭を悩ませていると、ルネさんが顔の前で手をひらひらさせた。
「あっ!あれですよ。尾行って言ってもずっと付けてたわけじゃないです!決してリヒトさんが男性に抱きしめられてキスするとか、トマトを姑息な手を使って盗むとか、なのに結局バレて追われるとかそんなの全然知らな」
「もういいですよおおおおお!!見てたんだろ全部!!何ですかアンタ達ストーカーですか!?」
もう嫌だ、つっこみたくない。行動する度に後ろから見られてたなんて考えたくもない。