第2章 非日常の始まり
肩がピクリと動いたのが自分でもわかった。
「男娼」という単語を聞いて反応してしまったのだ。
それを見てクリムさんが得意気な顔をする。
……この人、何で僕の仕事の事知ってるんだ?
固まっている僕を気にする様子もなく、というよりは僕の反応が面白いと言った様子で続けられる。
「あー、そうか。盗みで忙しいのか?今週の給料ケチられて少ねぇから。でも安心しろ、食物なら俺達が」
「ちょ、ちょっと、待ってください!」
やや大きめの声でベラベラと話し出すクリムさんを止める。何がおかしいのか心底楽しそうにクスクスと笑われた。
なんで盗みのことまで知っているのか。もしかてさっきの通りからつけてきたのだろうか。
いや、それ以前の問題。今週の給料が少ない事を知っていることがおかしい。
クリムさんは今、「給料が」ではなくて「今週の給料」と言ったはずだ。当てずっぽうで言ったわけじゃないだろう。