第2章 非日常の始まり
つい大声を出してしまった。
絶対この人頭おかしい。色んな意味で危ない人だ 。
「クリムさん!」
ルネさんが眉根をひそめて怒ると、クリムさんは悪戯をした子供みたいな顔をして笑った。
結局、何が言いたいんだろうか。話が全く読めない。
……いや、理解する必要はないか。
これ以上付き合ってたら恐らく日が暮れる。
ついには言い争いをし始めた二人に痺れを切らして、僕は二人の横を通り抜けた。
「……え」
……通り抜けたかったのだが、なぜかクリムさんに腕を掴まれてしまった。かなり力強く。
「ちょ……っ、離して下さい。僕忙しいんですけど」
この時点で大声を出して助けを求めたいところだけど、あんまり騒げばさっきの店の奴らに見つかってしまうかもしれない。
すると、クリムさんがニッと口角を上げた。
「忙しい?嘘だな」
「はあ?何が言いたいんですかもう!」
クリムさんの口ぶりにだんだんとイライラが増してきて、ついに怒鳴った。
フンッ、と鼻で笑われる声がした。
「男娼の仕事はさっきので終わりだろ?」