第1章 空よ、泣き止め
だから本気に諦めるつもりだったのだ。けれど、そんな覚悟を決めた矢先に、晋助は唐突に現れた。しかも愛用している三味線を持って。
一体どういうつもりで自分に会いに来たのだろうか。には晋助の真意が図りかねた。ただ懐かしさで会いにくるとも思えないし、テロリストである今、刀を置いてくる理由がもっと分からない。命を自ら危険に晒してまで、に会う理由が果たしてあるのだろうか。三味線を弾く相手を求めて? いくら何でもそれは無いだろう。それとも、晋助は…。
は考える事を放棄した。晋助の真意が掴めない以上、に出来る事は永遠と憶測を立てるか、晋助に尋ねるかの二択だけだ。世間話もしたいが、何よりも晋助にどう思われているのかが気になる。望む答えは返ってこないかもしれない。本当に晋助には必要とされていないのかもしれない。戻ってくる返事が怖いが、それでもこの機会を逃せば二度と会えないかもしれない。一人で悩むより、白黒はっきりした方がの為にも良いだろう。だから、久々に楽しい時間が過ごせただけでも満足だと己を説得し、は精一杯勇気を振り絞って晋助に自分の必要性を問うた。