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空よ、泣き止め(銀魂:高杉夢)

第1章 空よ、泣き止め


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「馬鹿言え。何の為にこの俺がわざわざ出向いたと思ってやがる。」

 その言葉を聞き、の頭は真っ白になった。

 期待をしても良いと言うのだろうか。晋助が「自ら赴く」と言う事実だけで、にはそれだけの価値があると捉えても良いのだろうか。七年間、長い長い月日の間で、二人の事情は変わってしまった。は一本立ちして名の知れた旅芸人となり、晋助は何度も言うように幕府の反逆者である。離れていた時間を埋め合わせるのに、また膨大な時間が必要となるだろう。それでも、晋助はとの絆を築き直す事を望んでくれているのだろうか…。

「来い。」

 続けて晋助から紡がれた言葉は、何よりも欲していた言の葉だった。理由も何もかも省いた命令は、恋情があろうがなかろうが、の存在を欲している事を暗に示している。

「…良いのかい? アタシは今のアンタにとって足手まといにしかならないよ?」

 けれど、いくら欲しい言葉だったとしても、の理性が戸惑いを見せる。自身、道徳的に反していると分かっていても、晋助の手を取りたい。幕府を敵に回しても構わないと思う程、この男を慕っている。しかし、本当に躊躇する理由は他にあった。昔、攘夷戦争時に言われたように、には三味線しかない。巨大で難しい野望を抱いている晋助の為に何か出来るとは思えなかった。今の晋助は常に死と隣り合わせだ。戦いとの縁も強いのだろう。戦闘に巻き込まれてしまえば、は本当に足手まといだ。それに晋助は以外と心許す者には優しい。銀時と小太郎とは関係が拗れたようだが、に危険が迫れば、恐らく見捨てる事は無いだろう。それを見越して、は素直に晋助の命令には従えずにいた。
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