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空よ、泣き止め(銀魂:高杉夢)

第1章 空よ、泣き止め


 何でもお見通しだとでも言うように、はクスクスと笑いながら言った。あながち間違っていないのか、晋助も子供のように悪態を吐く。脳裏に真選組動乱後の河上万斉の姿が浮かぶ。部屋を去る万斉の背中は、確かに晋助ではなく、対峙したばかりの坂田銀時に興味を持っていた。直接は言われなかったものの、あの時の万斉は共に演奏する気はなかったのだろう。…そもそも一緒に音楽を奏でる可能性があるだけで、実際に共演した事もないのだが。「一人は居る」と言うのも、負けず嫌いで意地っ張りな男が口にした小さな嘘だった。

「ふふ、アンタほど気難しい音を出す弾き手はそうそう居ないだろうさ。始終一緒に弾ける人もいないんだろう。」

「人の事が言える立場じゃねぇだろ。噂聞いてりゃあお前ぇも随分と長い間、一人旅を続けてるそうじゃねぇか。どっかの音楽団体にでも入りゃ良いものを。」

軽い売り言葉に買い言葉で、と晋助はお互いの協調性の無さにケチをつける。しかし二人は何処までも平和で楽しそうな会話を繰り広げていた。こうして軽く罵り合うのも、昔懐かしい行為だったのだ。

「一人は気楽で良いのさ。好きな音を好きな時に出せる。それにアンタの耳に入るほど名は売れてるんでね。宿代も食べ物にも困っちゃいないよ。…そんな事より、早くアンタの音を聞かせてくんな。」

 アンタ、わざわざ持って来てくれたんだろう、三味線(そいつ)を。

 は顎をしゃくりながら、晋助の隣に置いてある三味線の示した。本当に盲目であるかを疑ってしまうほど、勘の良い女だ。否、盲目だからこそ分かる事があるのだろうか。目は見えぬと言うのに、昔から何かと気づく。
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