第15章 【東峰 旭】年下の彼氏
旭と出会ったのは、私が仕事中に乗り合わせたバスの中。
学生がいっぱい乗車している時間帯は本当に苦手…。
かなり混んだ車内に乗り込み、私はつり革に掴まりながら書類に目を通していた。
キィー
書類をめくろうとつり革から手を離したその瞬間、
バスは急ブレーキをかけた。
絶対転ぶ。そう思った。
「だっ、大丈夫ですか?」
私が顔を上げると、学ラン姿の高校生が立っていて、
私の身体を支えてくれていた。
「あっ…はい。すいません」
私が態勢を整え、彼にお礼を告げようと思った。
ビィー
その時、バスの扉が開いて大勢の乗客たちが乗ってきた。
私はその乗客たちに押し込まれるまま、
彼によりかかる形で立った状態になってしまった。
「…すみません」
「あっ、いえ!俺は大丈夫です!…すごい混みようですね」
それから、掴まるつり革もなくて、
バスが発車停止するたびによろめき、彼の方に寄りかかってしまう。
「何度もごめんなさい」
そんな私に彼が居た堪れない表情で腕を差し出した。
「あっ…よかったら、俺の腕に掴まりますか?」
私はそっと、彼の腕に手を置いた。