第99章 【東峰 旭】U&I
次の日、社内で彼に極力会わないように行動していた。気疲れしたのだろう。会社を出た後大きなため息が出た。大きく息を吸いグッと顔を上げると、バス停付近に制服姿の旭くんが立っていた。
「旭くん・・?どうしたの?」
私が後ろから声をかけると旭くんは勢いよく振り返り、驚いた顔をした後に眉を下げて笑った。
「あっ・・えっと・・今日も送り・・ます」
「えっ?!部活で疲れてるのにわざわざ来てくれたの・・?」
旭くんの姿を見つけた時、仕事で疲れた顔をしていた私の顔が少し緩んだことは自分でもわかった。しかしすぐ後に、昨日元恋人から言われた言葉が頭をよぎる。
私は以前自分を好きだと言ってくれた相手といることで、心に出来た傷を癒そうとしているのではないか。彼にあなた以外にも私を好いてくれる人がいるんだ。と伝えることで裏切られた可哀想な自分を隠そうとしているのではないだろうか。
そんな事を考えていると旭くんは心配そうに私の顔を覗いた。
「ひろかさん?大丈夫ですか?」
「あっ・・ごめん。ちょっと仕事で疲れただけだから気にしないで!」
私が笑って答えると、ホッとした表情を見せる旭くん。
そんな旭くんを見て、正直心が晴れて行く自分がいた。