第99章 【東峰 旭】U&I
旭side
失恋をしてから数か月が経った。
落ち込んでいた気持ちも少しずつ時間が癒してくれた。唯一の救いはひろかさんとは、普通に生活をしていればバッタリ会うことがないという事だ。
「なぁなぁ、今日ラーメン食いに行こうぜ!」
部活終わりのスガの提案に、着替えていた大地が勢いよく振り返り即答で了承した。
「旭も行こうぜ?」
「あっ、うん。どこの?」
「今日チラシで見たんだけど・・・」
そう言ってスガが携帯画面を俺たちに見せた。
画面には新しく出来たラーメン屋の詳細が載っていて、店の外観と美味しそうなラーメンの画像に俺たちの空腹感が加速する。
「あっ・・ここ」
「ん?どうかしたか?旭」
「あっ、いや。なんでもない」
そのお店はひろかさんの会社がある駅のすぐそばで、自分の中から少しずつ消えかかっていたひろかさんの顔が一気に俺の脳裏に映し出された。
「はぁ~。うまかったな~」
「俺はもっと辛くても良かったな!」
新しいラーメン屋は結構美味しかった。次回使える割引券ももらって俺たちは上機嫌でバス停まで向かった。
今日放送されるテレビ番組の話なんかをしていると、少し前の方で男女のカップルが言い争っているのが見えてきた。
スガが面白がって興味を示し始め、大地がそれを止めた。
そんな二人を見て俺は苦笑いをした後、そっとそのカップルに目を向けた。
「・・・ひろかさん?」
「えっ!?・・あっ!ちょっ!旭!?」
俺は咄嗟にカバンを投げ捨て、ひろかさんらしき人の方へ駆け寄った。
「旭くん!?なんでここに・・」
近くに行けばやはりひろかさんで、俺に気がついたひろかさんがいきなり俺と腕を組んだ。そして、一緒にいた男性に向かってそれを見せつける様にして口を開いた。
「ごめんね、今この人と付き合ってるの。だから、もう会いに来ないで」
そう言ってひろかさんは半ば強引に俺の腕を引っ張りながら歩き始めた。
「ひろかさん?・・えっ・・と」
「ごめん。今は黙って歩いて!!」
「・・はい」