第99章 【東峰 旭】U&I
しばらくして俺がそっと後ろを振り返ると先ほどの男性はすでに居なくなっていて、それをひろかさんに伝えるとホッとしたように俺の腕から離れた。
「ごめんね。変なことに巻き込んで。今の事は忘れて?」
そう言って、すぐに目を逸らして去っていくひろかさん。
俺がひろかさんを呼び止めようとした時、スガ達が俺のカバンを持って追いかけてきた。
「旭!カバンカバン!・・あっ、どうも」
スガがひろかさんに気がついて小さく会釈をすると、ひろかさんも頭を下げた。
「旭、俺ら先に帰るから。また明日な。ちゃんと送って行けよ?じゃーな」
大地はひろかさんに会釈をしながら、スガの持っていたカバンを俺に渡してバス停の方へ向かって行った。スガもそんな大地を見て慌てて後を追い、その場には俺とひろかさんだけになった。
「・・ひろかさん。送って行きます」
「いい!大丈夫だから!」
ひろかさんは俺の顔を見ることもなく、少し俯きながら首を横に振った。
「でも・・」
俺が引き下がるとひろかさんは小さく深呼吸をして、ゆっくり俺の方を向いた。
「旭くん。私ね、思わせぶりな事するの嫌いなの。旭くんの気持ちを知った以上、旭くんとは親しく出来ない。・・さっきは正直助かったけど、これ以上は私の問題だから」
まっすぐ俺を見るひろかさんの目はすごく強い意志が感じられる反面、どこか悲しさが溢れているような、そんな目をしていた。
「それじゃ・・」
そう言って俺に背を向けて去っていくひろかさんの腕を咄嗟に掴んだ。
「ひろかさん、俺・・・!!」