第99章 【東峰 旭】U&I
ひろかside
「今日は何にしようかなぁ・・」
今日は仕事も早く終わり、帰り道にあるスーパーへ寄った。
ジャケットのポケットから携帯を取り出して慣れた手つきでメールを打つ。
数分後、通常のメール着信音とは違う音が鳴り、私は急いで画面を確認する。
「・・酢豚ね。了解っ!」
パタンと携帯を閉じて人参を手に取った。
連絡相手は恋人。同じ職場の先輩だ。
いつもは二人で外食することが多いが、今日は私が早く上がれたので家で食べることになったのだ。
会社から比較的近い私の部屋。彼はよく私の部屋へ泊りに来る。まぁ、ほぼ同棲と変わらない。付き合って数年。今年で24歳の私は彼との将来も視野にいれていた。
職場では付き合っていることを隠している。彼が仕事をする上で支障が出るのを懸念して提案してきた。少し残念だったが同じ業務をやる事もあったので、周りから変に茶化されても嫌なので了承した。
「あっ・・これ」
酢豚に必要な材料をカゴに入れ、レジに向かう通りに見覚えのあるパンが置いてあった。私は携帯でパンの画像を撮影してメールを送った。
その相手は最近知り合った高校生の男の子。東峰旭くん、烏野高校の2年生。バスの中で助けてもらってからたまに連絡を取ったり、上司の息子さんへのプレゼント選びを手伝ってもらったり仲良くしてもらっている。
旭くんが以前、私が高校の時に好きだったと言ったこのチョコメロンパンをわざわざ職場近くまで届けてくれたのだ。
私は会計を済ませて家路を急いだ。
アパートの階段を上り部屋の鍵を開け、真っ暗な部屋の電気をつける。
買い物袋をキッチンに置いて、ジャケットをハンガーにかけるとブーブーと携帯のバイブが鳴った。
「仕事終わったのかな?」
恋人からの連絡だと思い携帯を開くと、そこには「旭くん」と表示されていた。
さっき自分からメールを送ったことをすっかり忘れていた。