第98章 【日向 翔陽】太陽はいつも君の傍に
「部活きつかったの?」
「うぅ~ん。自主練で影山とタイミング合わせてたら時間忘れてて・・」
「ふふ。澤村がいたらドヤされてるね」
「・・わっ!!いっ、言わないで!言わないで!!」
「アハハ。東京から電話してもらおうか?」
「・・そっか。澤村キャプテン今は東京か・・」
「そうだね」
自分で話を振っておいて、もう私や澤村達は烏野バレー部ではない事を思い出す。
澤村は東京の大学、菅原は京都の大学、東峰は地元で就職、潔子は県内の専門学校。みんなバラバラになってしまった。
ふと部屋に飾ってある卒業式の写真を見て、グッとこみ上げてくる感情を飲み込んだ。
「翔陽・・私ね・・」
「・・・・」
「・・翔陽?」
「・・・・」
「寝ちゃってる」
私は通話終了の画面をタップした。
そしてそのままベッドに倒れ込む。
スーツを脱ぐ気にもなれないし、テレビをつけるのも面倒くさい。
お腹は空いたけど、帰りに買ってきたコンビニのお弁当はもう食べ飽きた。
天井の模様をただひたすら眺めていると、涙がポロポロこぼれてくる。
何でも器用に出来ると思っていたのに、仕事では失敗ばかり。
“私はこの仕事に向いてないのかな”
翔陽にそんな事を聞いてどんな言葉を期待していたのだろうか。
翔陽はバレーに対してまっすぐだ。
身長が高くない翔陽にとって、バレーは決して向いているスポーツとは言えないけれど、それでも彼は諦めずに必死にバレーと向き合っている。
そんな翔陽にたった数か月働いて上手くいかなかったくらいで弱音を吐くなんてカッコ悪くて出来ない。
翔陽のキラキラした瞳が大好きだった。
だけど、今はそのキラキラした瞳が少し眩しすぎる。