第97章 【京谷 賢太郎】それはきっと空のせい
「ちけーよ。離れろ、邪魔くせぇ」
「あっ、ごめんごめん。つい興奮しちゃって・・」
ハハと苦笑いした後に、コンビニ袋から俺が買ったハミチキを取り出して俺に渡した。俺が袋を開けて一口食べると、じーっと俺の方を見てソワソワし始めた。
「っんだよ・・」
「・・一口ちょうだい?」
「あ゛ぁ!?」
「ひーとーくーちー!私のピザまん半分食べたじゃん!」
「お前が勝手に渡したんだろ!」
「ちぇっ。ケーチケチケチ。京谷のケチ!」
ぶぅ。と口を尖らせてくるので、俺は食いかけのハミチキを佐藤の口元へ持って行った。
「食べていいの?」
「ダメだって言っても食うんだろうがっ!」
「うん!」
佐藤はニカっと笑ってハミチキを食べると、美味しい!とまたヘラヘラ笑った。
「お前は・・そんなに俺に部活戻ってほしいのかよ・・」
「うぅーん。京谷が今のままでいいならそれでもいいとは思うけど、こんなにバレーが好きな京谷が今の青城のチームにいないのはもったいないな、とは思ってる。京谷が戻れば、きっと矢巾も喜ぶと思うし・・」
結局矢巾のためかよ。俺は大きくため息をついて冷めきったハミチキを眺めた。
「京谷、戻ってレギュラー取れる自信あるの~?もしかして、自信ないから戻らないとか?」
「あ゛ぁ!?んなわけねーだろ!」
「本当かなぁ~?ビビってんじゃないの~?」
おいっ!と俺の腕を突きながらニヤニヤ笑って挑発してきた。
「ビビってねーよ!レギュラーくらい取れるに決まってんだろ!!」
「本当!?楽しみにしてるっ!!試合、応援行くね?」
まんまと佐藤にハメられた。
佐藤は嬉しそうに笑いながら次の大会の予定なんかをチャックし始めた。
“ねぇ、京谷。私ってさ、バカ・・?”
さっき駅前で会った時に見せた泣きそうな顔が今ではいつものようなヘラヘラした笑顔に変わっていて、ハメられたことのイライラが無くなっていった。
冷めきったハミチキもそんなに不味くは感じなかった。