第97章 【京谷 賢太郎】それはきっと空のせい
学校帰り近くの体育館でバレーの練習をした後、駅に向かう途中に背後から声をかけられた。
「あれ?京谷??」
そこには佐藤がいて、制服姿のままだった。
「こんな時間まで何してんだよ」
「あっ、ピアノのレッスンの後に友達に呼び出されてお茶してたの。京谷は・・練習?」
「はっ!?」
「・・ふふ。何で分かるのかって?だって、1年の時から部活に行ってないって聞いてたのに毎日スポーツバック持ってるし、それに・・分かるよ、それくらい」
佐藤はそう言って、駅の方向に歩き出した。
「ねぇ、京谷。私ってさ、バカ・・?」
「・・は?」
「ううん!ごめん、何でもない!」
そう言ってすぐにヘラヘラ笑ったが、一瞬見せた表情は以前矢巾に好きな女がいると話した時に見せた顔と同じ顔をしていた。
いつもヘラヘラしている佐藤が今にも泣きそうな顔をすると調子が狂う。
「・・腹減った」
「へ?」
「コンビニ行く」
「・・付いて行ってもいい?」
「いつもなら付いて来んなって言っても付いて来んじゃねーかよ」
「はは。そうか。うん、付いて行こうっと!」
そう言って笑った佐藤を見て少しホッとした。
別にこいつがどうしてようが関係ない。けど、こっちの調子が狂うのは御免だ。
二人でコンビニによって近くの公園のベンチに腰掛けた。
「京谷はさ、もう部活に戻る気は全然ないの?」
「・・・」
はい。と自分が持っていたピザまんを半分に割って俺に差し出した。
俺はそれを受け取ってそのまま口に含んだ。
「矢巾がね、いっつも京谷が戻ってきたらって話してるんだ。岩泉さん達が3年になってバレー部も色々変わってきて、今本当に強いんだって。気にならない?」
佐藤は俺の顔を覗き込んできたので、顔を背けて残りのピザまんを全部口に入れた。頬がリスみたいに膨れ上がったのを見て、佐藤はまたくすくすと笑い始めた。
「岩泉さんだっているんだし。あとね、及川さんのトスってすごいんだって。・・矢巾もね!矢巾も中学の時本当に上手だったんだよ!!その矢巾が尊敬してる及川さんのトスって本当にすごいんだろうなって思う。打ってみたいと思わない!?」
そっぽを向く俺に前のめりで語り出す佐藤のおでこをグッと押しやった。