第97章 【京谷 賢太郎】それはきっと空のせい
「京谷~。遅いよ~」
佐藤が言う「いつもの所」俺がいつもサボっている屋上。
「・・はい」
俺が佐藤の隣に座るとハミチキを渡された。
「なんだよ、これ」
「ん?ハミチキ。好きでしょ?」
「そういうことじゃねーよ!」
「あぁ・・しいて言うなら、お詫び?」
そう言うと佐藤は自分用のハミチキの袋を破って、いただきます。と小さくつぶやいた。
「京谷も早く食べないと冷えちゃうよ?」
俺が渋々ハミチキを食べると、俺の方を見てまたニコニコ笑い始めた。
「昨日はごめんね?」
「は?なんでてめぇが謝んだよ。矢巾はお前に惚れてんだろ。面倒くせぇ・・」
「あぁ・・、違うよ?矢巾はね、他に好きな子いるから・・」
その時佐藤が見せた表情がすごく切なくて悲しくて今にも消えてしまいそうで、見ているこっちが喉の奥がきゅーっとなる感覚に陥る。
「お前は矢巾のこと好きなのかよ」
「えっ!?・・うぅーん。たぶん、そういう好きじゃない!」
そう言っていつものヘラヘラした笑顔に戻って、食べかけのハミチキを食べ始めた。
正直、今まで女を好きなったこともないし、「恋」と言うものを理解出来ない。
佐藤がいう『そういう好き』も分からない。
ただ、いつもヘラヘラ笑っているこいつの初めて見せた切なそうな顔がずっと頭から離れなかった。